基礎知識

うらじゃとは

”うらじゃ”って何じゃ?

毎年8月の第三土曜と日曜に岡山市中心部で開催されている“うらじゃ”。「踊り」を軸として開催されるこの祭りは、市民自らが中心となりそのほとんどをボランティアスタッフが運営する岡山の地域・文化・歴史に根ざしたストーリー性のある市民参加型の祭りとして、県内はおろか県外からも毎年多くの踊り子が参加する祭りとして岡山のまちに定着しています。

“うらじゃ”の願い

温羅(うら)のお話を基にし「共生と融和」をテーマにこの“うらじゃ”はつくられました。 “うらじゃ”をきっかけに「郷土の歴史や文化に興味を持つ」ということから「知らなかった歴史や文化を調べ・知る」といった行動を導き、「郷土を誇りに思う心」や「まちを大切にする心」や「人と人との繋がりを大切にする心」を育む活動に繋げ「まちのために行動を起こせる人」の育成を目指したいと考えています。
“うらじゃ”の最後に岡山のまちに感謝し、踊り子が自主的にゴミ拾いをして日常に帰るのもこうした気持ちの現れです。

“うらじゃ”の今

1994年にまちづくり、ひとづくり、幸せづくりのきっかけになればと始まった“うらじゃ”。踊り子・観客・裏方が一緒になって踊る「総おどり」から始まったこの祭りも、今では市内中心部にそれぞれの特色を出し設けられる「演舞場」や、商店街・市役所筋公道を練り歩き群舞する「パレード」など多くのコンテンツを持ち岡山のまちを祭りムード一色に染め上げます。

【総おどり】

“うらじゃ”の最大の特徴、それがこの総おどりでしょう。祭のフィナーレに、約1時間、温羅の魂を天上に還す踊りを踊り子も観客も裏方までもが一体となり踊ります。他のお祭りに類を見ない規模でのこの総おどりは、多くの人を魅了し「本場岡山の総おどり」として遠方から足を運ぶ人も大勢いらっしゃいます。

【温羅化粧】

「おどり」と共に“うらじゃ”に欠かせない「温羅化粧」。古代吉備の民は五穀豊穣に感謝し、顔に色を塗り喜び感謝したとも言われています。温羅を模した化粧や連のイメージなど、思い思いの化粧を踊り子だけではなく観客もほどこし、祭りを楽しみます。

温羅について

「ねぇ、“うらじゃ”の温羅(うら)って『桃太郎』の鬼のことなんでしょう?
なんで、“うらじゃ”は桃太郎じゃなく、悪者の「鬼」が主役のなの?」

「確かに、桃太郎のお話の中では人々を苦しめた鬼として描かれとるなぁ。しかし温羅は吉備国(昔の岡山県)の発展に大いに貢献した英雄なんじゃ。今日は『もうひとつの温羅の話』をしてみようか」

「そもそも温羅とは、朝鮮は百済(くだら)で起きた戦を逃れ、海を渡ってきた渡来人の長なんじゃ。古くから朝鮮半島と交流のあった吉備の人々はそんな温羅たちの事情をくみ、彼らを快く受け入れた。温羅はそんな心優しい吉備の人々のため、“たたら”(製鉄)や造船、製塩など当時の百済の優れた技術を伝授したんじゃ。そんな高い技術と集団を率いる英知をもった温羅は、吉備の人々に慕われ、まもなく吉備国の王となった。そうして温羅はますます吉備国の発展に貢献したんじゃ。“うらじゃ”はこの岡山を豊かにしてくれた温羅に感謝の舞いを奉納する祭りともいえるのかなぁ」

「へぇ~、でも それじゃあ なぜ温羅は鬼にされたの?」

「そこじゃ!温羅のおかげで豊かになった吉備国を恐れたのか、その優れた製鉄の技術をあるいは豊富な鉄の産地そのものを狙ったのか、その覇権をめぐりヤマト王権と争いが起きたんじゃ。戦いに負けた温羅はその戦いを正当化するため「鬼」というイメージを付けられ悪者にされたのかも知れんなぁ」

「じゃあ本当は桃太郎が悪い人だったんだね」

温羅や吉備の人々から見るとそうじゃな。だけど温羅は、今でもここ岡山では桃太郎のモデルとなった吉備津彦命と共に大切に祀られているし、千年以上たった今でもこの地を護ってくれているそうじゃ」

「史実は分からんが、はるか昔この地に逃れて来た温羅を快く受け入れたり、吉備国の覇権争いに敗れ『鬼』とされてしまった温羅をも等しく祀ったりと、寛容で大きな心を岡山に住む私たちは先人達から脈々と受け継いでいる。 まさに“うらじゃ”のテーマ『共生と融和』 そう考えると、温かい気持ちにならないか」

 

「うん、桃太郎も鬼も僕たちの住んでいる岡山では大切にされているなんて知らなかったよ僕、温羅や岡山のこともっと知りたくなったよ」

「そうか、じゃあ今度の休みはたくさんの史跡が残っている温羅伝説の舞台へ行ってみよう!」

 

温羅伝承

昔々、吉備の国に温羅という恐ろしい鬼が異国の地より舞い降りた。両目は爛々と光り虎狼のよう、ヒゲは燃えるがごとく赤き色をし、身の丈は4mを越える。吉備冠者(きびのかじゃ)とも呼ばれるその鬼の性格はとても凶暴で、その居城を「鬼ノ城」と呼び人々は大変恐れ、都に助けを求めた。都はその願いを聞き、五十狭芹彦命(いせさりひこのみこと=吉備津彦命)を遣わした。しかし命が矢を放てば温羅は岩をあて矢をことごとく打ち落とすといった具合に中々らちが明かない。そこで命は一度に2本の矢を放つ、一矢は落されたが一矢が温羅の左目に刺さった。流れ出る血は川となるほど、温羅はこれはたまらんとキジになって逃げれば、命は鷹となってこれを追う。さらに鯉となって川へ逃げれば命は鵜となってこれを追い、ついに温羅を召し取る。観念した温羅は吉備冠者の称号を命に与え、ここに成敗される。

※このお話にはまだ続きがあるのですが、この辺りまでが昔話『桃太郎』の源となったといわれています。